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    <title>夏草や　うなものどもが　夢の跡</title>  
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    <description>うなぎさんのダメだったものが陳列されていきます</description>  
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    <title>うな童話　　ヤジロベエ、ころんだ</title>  
    <description><![CDATA[<p>
　むかしむかし、あるところに、二つの村がありました。
　二つの村は、たいそうなかが悪くて、西の村人は東の村のわるぐちを、東の村人は西の村のわるぐちをいっていました。
　そこに、ある日、一人のたびびとがおとずれました。
「なんてなかのわるい村なんだ」
　たびびとは二つの村のなかのわるさを悲...</p>]]></description>  
    <content:encoded><![CDATA[<p><br />
　むかしむかし、あるところに、二つの村がありました。<br />
　二つの村は、たいそうなかが悪くて、西の村人は東の村のわるぐちを、東の村人は西の村のわるぐちをいっていました。<br />
　そこに、ある日、一人のたびびとがおとずれました。<br />
「なんてなかのわるい村なんだ」<br />
　たびびとは二つの村のなかのわるさを悲しみました。そして、近くの山の中にはいると、大きな木の枝とわらを何本もひろってきて、二つの村のちょうどまんなかに、大きなヤジロベエをつくりました。<br />
「ヤジロベエ、おまえはこの村をみまもっておくれ。二つの村の悲しい気持ちがかたよりすぎないように、おまえはここに立ちつづけるんだよ」<br />
　たびびとはそういって、次の村へとたびだちました。<br />
「ようし、ぼくが村をまもるんだ」<br />
　ヤジロベエは、決心しました。<br />
　ヤジロベエは木とわらでできているので、しゃべれません。けれども、二つの村をなかよくさせたいというきもちは、本物でした。</p>
<p>　それからしばらくして、東の村のわかものがヤジロベエのところへやって来ました。<br />
　わかものはたいそうおこっていました。<br />
「西の村のやつらめ。あいつらのせいで、川の水がよごれてしまったぞ」<br />
　ヤジロベエは、その言葉のおこった気持ちを、右の手でひょいとつまみました。<br />
　右の手がすこしおもくなりましたが、これくらい、なんともありません。<br />
「おや、しゃべったら、なんだかすっきりしたぞ」<br />
　若者ははればれとした顔で東の村にもどりました。<br />
　またしばらくして、今度は西の村のわかものがやってきました。<br />
　わかものは、たいそうにくたらしそうに言いました。<br />
「東の村のやつらめ。あいつらさえいなければ、もっと畑が大きくなるのに」<br />
　ヤジロベエは、今度は左の手で、そのにくたらしい気持をひょいとつまみました。<br />
　左の手かおもくなりましたが、さきほどの右の手のおもさとあわせてちょうどいいくらいです。<br />
「なんだかすっきりしたぞ」<br />
　わかものは気持ちのよい顔で西の村へかえりました。<br />
「ああ、よかった。こうしてぼくが、二つの村のいやな気持をかかえれば、きっといつか、なかよくなるぞ」<br />
　ヤジロベエは、自分がやくにたててうれしいのでした。</p>
<p>　二人のわかものが、それぞれの村で言いました。<br />
「あのヤジロベエのところで、思っていたことをしゃべるとすっきりするぞ」<br />
　それ以来、二つの村では、いやなことがあるとヤジロベエのところへ行ってしゃべるようになりました。いやなことは、もちろんほとんどが相手の村のことです。<br />
「西の村の牛のせいで、このあたりは臭くてたまらない」<br />
　ひょい。ヤジロベエはその気持ちをつまみます。<br />
「東の村の馬のせいで、毎朝うるさくてたまらない」<br />
　ひょい。ヤジロベエはその気持ちをつまみます。<br />
「息子に買おうと思っていたおもちゃを、西の村の村長に買われてしまった。なんてじゃまなやつらなんだ」<br />
　ひよい。ヤジロベエはつまみます。<br />
「娘にやろうと思っていた花が、東の村の村長につまれてしまった。どうしてあいつらはじゃまばかりをするんだ」<br />
　ひょい。ヤジロベエはつまみます。<br />
　ずっとずっと、いつまでもヤジロベエはつづけます。</p>
<p>　そうして、気がつくと十年がたっていました。<br />
「ああ、おもい。なんておもいんだ」<br />
　ヤジロベエのつまみあげたいやな気持ちは、つもりつもって、すごいおもさになっていました。丈夫な枝でつくられたヤジロベエのうでも、ちかごろではぎしぎし、ぎしぎし、なりひびいて、ささやかな風がふくだけで、いまにも折れてしまいそうです。<br />
　そんなことには気づかない二つの村のひとたちは、今日もいやな気持ちをしゃべりにきます。ほら、東の村の村長がきました。<br />
「西の村なんて、さっさとなくなってしまえばいい」<br />
　右手でひょいとつまむと、あまりの重さにヤジロベエのからだが、ぐぐぐっと東にかたむきました。いまにもころんでしまいそうです。しかし、ころぶわけにはいきません。東にころべば、つもりにつもったいやな気持ちが、東の村にあふれてしまいます。ヤジロベエは必死にこらえます。<br />
　今度は、西の村の村長がきました。<br />
「東の村なんて、はやく消えてしまえ」<br />
　左手でひょいとつまむと、あまりの重さに今度はぐぐぐっと西にかたむきました。もちろん、西の村にもいやな気持ちをあふれさせるわけにはいきません。ぎしぎしとうでを鳴らしながら、ヤジロベエはころばないようにがんばります。</p>
<p>　その夜、ヤジロベエはなげきました。<br />
「ああ、ぼくを作ったたびびとさん。なんでもっとじょうぶな枝でぼくのうでを作ってくれなかったのですか。これではもう、ここに立っていることはできません」<br />
　そこへ、一羽のカラスがやってきて、ヤジロベエの頭に止まりました。<br />
「ころんでしまえよ、きみ。そんなにがんばっても、きみになんの得があるというのだい。きみがつらいだけじゃないか」<br />
　ヤジロベエはただゆらゆらとゆれて、首をふります。<br />
「ぼくは、村の人たちが笑ってくれるなら、それでいいんだ」<br />
「おまえはなんてバカなんだ。そうしてずっと耐えて、いつか泣きながら折れてたおれてしまえばいいさ」<br />
　カラスはバカにしたように鳴きながら、飛んでいきました。　</p>
<p>　次に、東の村からわかい男が、西の村からわかい女が、やってきました。東の村の男と、西の村の女は、ヤジロベエの前にたつと、二人で声を合わせて言いました。<br />
「東の村も西の村も、なくなってしまえばいい」<br />
　ああ、またいやな気持ちがふえました。ヤジロベエはころばないようにふんばりながら、右と左のりょうほうの手で、二人のいやな気持ちをつまもうとしました。<br />
　ところが、おや？　ヤジロベエはおどろきました。いやな気持ちがみあたりません。これはどうしたことでしょう。<br />
　二人はそのまま、それぞれの村に帰っていきました。<br />
　それから数日は、だれもヤジロベエのところに来ませんでした。<br />
　ヤジロベエはほっとして、このままだれも来なければ、ずっとここに立っていられると思いました。しかし、そういうわけにもいきません。<br />
　ある日、東の村の村長と、西の村の村長が、どうじにヤジロベエのところに来ました。<br />
　ああ、ぼくももう、おわりだろうか。ヤジロベエは思いました。二人の村長はとてもなかがわるいのです。いまのヤジロベエに、二人のいやな気持ちをかかえることなんて、とてもできません。<br />
　二人の村長は、ずっとにらみあっています。そして、ついに二人がどうじに口をひらきました。</p>
<p>「わしがわるかった」<br />
　二人は言いました。<br />
「息子のおかげで、やっとわかった。わしらは力を合わせるべきだったんだ」<br />
「娘のおかげでやっとわかった。いがみあっていて、どれほどのことができるだろう」<br />
　おどろくヤジロベエの前に、東の村長の息子と、西の村長の娘がやって来ました。<br />
　二人は、この間の夜のわかい男とわかい女でした。<br />
「わたしたちは、けっこんします。もう東の村も西の村もありません。ここは、ひとつの村になるのです」<br />
　二人はわらっていました。ヤジロベエが見たくてたまらなかった、それはそれはすてきなえがおでした。<br />
　そのとき、ばきばきばき、という音がしました。</p>
<p>　ヤジロベエのかかえていたいやな気持ちは、ぜんぶなくなりました。<br />
　もう、どこにもいやな気持ちはありません。<br />
　ヤジロベエはうれしくて、かるくなった両手でおもいきり、ばんざいをしました。<br />
　そのいきおいに、もろくなっていたヤジロベエのからだはたえられませんでした。<br />
　こうして、ものすごい音をたてて、役目をおえたヤジロベエはころんだのです。<br />
　東でも西でもなく、おひさまの見ている南へむかって、ころびました。<br />
　やっと、ころぶことが、できたのです。<br />
&nbsp;</p>]]></content:encoded>  
    <dc:subject>うな童話</dc:subject>  
    <dc:date>2010-03-16T23:31:42+09:00</dc:date>  
    <dc:creator>うなぎ</dc:creator>  
    <dc:publisher>NINJA BLOG</dc:publisher>  
    <dc:rights>うなぎ</dc:rights> 
  </item>  
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    <dc:date>2010-03-16T23:31:42+09:00</dc:date>
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    <title>うな童話　　たまごが先だ</title>  
    <description>　あるところに一つの町がありました。 　町の人は何に対しても無関心で、だれが困っていても、助けようとしません。だから町はいつも静かで、ちっとも栄えませんでした。 　これを見ていた神様は、大きなたまごを三つ、町の真ん中の広場に置くことにしました。 　はじめは、だれも気にしませんでした。この町...</description>  
    <content:encoded><![CDATA[<p><br />
　あるところに一つの町がありました。<br />
　町の人は何に対しても無関心で、だれが困っていても、助けようとしません。だから町はいつも静かで、ちっとも栄えませんでした。<br />
　これを見ていた神様は、大きなたまごを三つ、町の真ん中の広場に置くことにしました。</p>
<p>　はじめは、だれも気にしませんでした。この町の人は、何に対しても無関心だからです。たまごの横を、見ることもなく通り過ぎます。<br />
　そうして何日もが過ぎましたが、ある日、一人の男がたまごにぶつかりました。<br />
　男は転びましたが、たまごにはひび一つ入りません。<br />
「なんて丈夫なたまごなんだ」<br />
　男は驚いて、三つのたまごを殴ったり蹴ったりしてみましたが、一つも割れません。<br />
　大人の頭ほどもあるたまごは、持ち上げてみるとひどく軽いものでした。<br />
　地面に叩きつけてみましたが、やっぱりたまごは割れません。とんかちを持ってきて、それで叩いてみましたが、やっぱり割れません。<br />
「おい、みんな、こいつはすごいたまごだぞ。絶対に割れないんだ」<br />
　最初はだれも立ち止まりませんでした。けれども、男があれやこれやと試しているうちに、何人かが足を止めはじめました。<br />
「割れないはずがないだろう」<br />
　立ち止まった人々は、自分なりの方法で、たまごを割ろうと試しました。<br />
　壁に投げつけたり、高いところから落としたり、釘を打ちつけてみたり、何度も踏んづけてみたり、思いつくかぎりの方法が試されましたが、たまごは一つも割れません。そうしてたまごが割れないままに、何日かが経ちました。<br />
　割れないたまごの話は、人々の口から口へと伝わり、町中の人間が知るようになりました。毎日毎日、いろんな人が訪れて、いろいろな方法でたまごを割ろうとためしました。<br />
　もちろん、だれがなにをしてもたまごは割れなくて、みんなが首をひねりました。<br />
「いったいこのたまごの中には、なにが入っているのだろう」<br />
　町の人たちは、口々に中身についてうわさをし、自分たちなりの予想を立てました。<br />
　普通に大きな黄身と白身だけだという人。<br />
　巨大な鳥が産まれるのだという人。<br />
　金銀が詰まっているのだという人。<br />
　赤ちゃんが入っているのだという人。<br />
　天使様が入っているのだという人。<br />
　いろいろな予想が立てられましたが、割れないことにはわかりません。<br />
　たくさんの人がたまごを囲んで見ている中で、だれかが言いました。<br />
「ああ、たまごの中身がわかるなら、なんだってするのに」<br />
　その時でした。たまごがひとつ、自然にパカリと割れました。<br />
　驚きながらみんなが中身に注目します。<br />
　ところが、たまごの中は、空でした。<br />
「なんだ、空じゃないか」<br />
「でも、なんで空なんだろう」<br />
「そんなことより、いったい、どうして割れたのだろう」<br />
　割れたたまごの殻は回収されて、研究されることになりました。<br />
　ところが、あれだけ堅かったたまごの殻は、いまではもう、普通のたまごと変わらない、もろくて柔らかいものになっていました。</p>
<p>　残りの二つのたまごは、あいかわらず割れないままです。<br />
「なにか、残りの二つを割る方法もあるはずだ」<br />
町の人々は、こぞってたまごの研究をはじめました。<br />
　たまごを割るために、いろいろな発明がされました。その発明をもとに、また別の発明がつくられて、またたくまに、たくさんの発明が町中にあふれました。しかし、どの発明品も、たまごを割ることはできません。<br />
　なかなかうまくいかないので、だんだん、人々はイライラしてきました。<br />
「お前の発明品なんか、役に立たないんだ。やめちまえ」<br />
「なにを。お前の発明品だって、なんの役にも立たなかったじゃないか」<br />
「なんだと、おれの発明品は、役に立つのだぞ。そら」<br />
　イライラのたまった人々は、発明品を使ってケンカをはじめました。硬い硬いたまごを割るためにつくった発明品たちです。それを人間になんて使ったら、とてもひどい目にあいます。<br />
「イタイイタイ」<br />
「イタイイタイ」<br />
　ケンカは町のあちこちで起こり、いろんなところから、イタイイタイという声が聞こえてきました。<br />
　ですが、この町には、人を助けるという考えはありません。だれもかれもがケンカをするばかりで、助けてなんてくれません。だから、イタイイタイという言葉ばかりが、町にあふれるようになりました。</p>
<p>「うるさいなあ」<br />
　一人の男が、あまりのうるささに耐え切れなくなりました。<br />
　男は、割れたたまごを研究していました。割れた殻をくっつけようとして、傷をなおす発明をしたのです。<br />
　その発明を使って、男は怪我をしている人たちを治していきました。<br />
「これで静かになるはずだぞ」<br />
　男はホッとしましたが、それだけではありませんでした。<br />
「ありがとう」<br />
　傷を治した人々は、生まれてはじめてその言葉を口にしました。<br />
「おや、なんだかこの言葉は気持ちがいいぞ」<br />
　男はその言葉が聞きたくて、町のあちこちに行っては、人々の怪我を治します。何度聞いても「ありがとう」は気持ちのいいものでした。<br />
「みんな、ありがとうは気持ちがいいぞ」<br />
　男が教えると、町の人々は疑いながらも、ほかの人たちを助けてみました。町のあちこちで「ありがとう」の声が重なり、人々はその言葉に夢中になりました。<br />
　気がつくと、人々は助け合うのが、当たり前のことになっていました。助け合って研究も進み、発明はどんどん生まれました。今度は、ケンカの道具にならない発明です<br />
　さまざまな発明品の力で、町はどんどん発展していきました。<br />
「助け合うって、いいものだね」<br />
だれかがそう、言ったとき、町の広場の真ん中で、パカリとたまごが割れました。やっぱり、中にはなにも入っていませんでした。</p>
<p>　残ったたまごは、あとひとつです。<br />
「最後のたまごにはなにが入っているのだろう」<br />
　人々は、興味を失いません。<br />
「最後のたまごの中にこそ、きっとすばらしいものがつまっているに違いない」<br />
　人々は、口々にたまごの中身を予想しますが、もうケンカは起きません。たまごの中につまっているであろうすばらしいものについて語り合い、そのすばらしいものを目にするために、毎日、いろんな研究をして、いろんな発明を生み出しました。<br />
　たまごのあった広場はきれいな公園になりました。公園の真ん中には立派な台座がつくられて、たまごは、そこに大事に置かれました。<br />
　町の人たちは、この公園を訪れるたびに思います<br />
「いつかたまごの中身を見るために、がんばろう」<br />
　こうして町は発展を続け、助け合う発明の町として有名になったのです。</p>
<p>「ああ、よかった。たまごのおかげだ」<br />
　すべてを見ていた神様は安心しました。横にいる天使は不思議でした。<br />
「でも神様、あのたまごは空なのに、どんな意味があったんですか」<br />
「逆だよ。たまごは中が満たされると割れるのだよ」<br />
　神様は教えてくれました。<br />
「一つ目のたまごは『好奇心』を求めていた。町に好奇心が満たされて、たまごの中いっぱいになったから、割れたのだよ」<br />
「二つ目は、なにを求めていたのですか？」<br />
「二つ目は『優しさ』を求めていたのだよ。好奇心と優しさに満たされて、町は素敵になったのだ」<br />
「でも、三つ目は割れなくて残念でしたね」<br />
　神様は笑いました。<br />
「三つ目は割れなくていいんだよ。あの中には『夢』がつまっているんだ。割れないから、わからないから、夢はいつまでも夢でいられるのだよ。決して割れない夢の塊が、また新しい夢を生むのだ。だから、たまごの周りは、いつだって夢に満たされているのだよ」</p>
<p>　割れないたまごに夢を見て、今日も町は素敵に輝きつづけます。<br />
&nbsp;</p>]]></content:encoded>  
    <dc:subject>うな童話</dc:subject>  
    <dc:date>2010-03-16T23:26:22+09:00</dc:date>  
    <dc:creator>うなぎ</dc:creator>  
    <dc:publisher>NINJA BLOG</dc:publisher>  
    <dc:rights>うなぎ</dc:rights> 
  </item>  
  <item rdf:about="http://unagi0924.blog.shinobi.jp/Entry/68/"> 
    <link>http://unagi0924.blog.shinobi.jp/Entry/68/</link>  
    <title>うな童話　　砂場の魔王はもういない</title>  
    <description>　タケルくんは砂場が好きです。 　好きなのでほかの子が砂場にいると、 「どけよ」 　と、蹴飛ばして、どかしてしまいます。 　だから、タケルくんはいつも砂場で一人でした。 　今日もタケルくんは、一人で砂のお城をつくります。 「よし、できたぞ」 　タケルくんは自分のつくったお城を満足そ...</description>  
    <content:encoded><![CDATA[<p><br />
　タケルくんは砂場が好きです。<br />
　好きなのでほかの子が砂場にいると、<br />
「どけよ」<br />
　と、蹴飛ばして、どかしてしまいます。<br />
　だから、タケルくんはいつも砂場で一人でした。<br />
　今日もタケルくんは、一人で砂のお城をつくります。<br />
「よし、できたぞ」<br />
　タケルくんは自分のつくったお城を満足そうに見下ろします。<br />
「どうだ、すごいだろう」<br />
　見回してもだれも周りにいません。<br />
　タケルくんがいつも蹴飛ばすので、だれも公園に来なくなってしまったのです。<br />
　せっかくすごいお城がつくれたのに、自慢する相手がいません。<br />
「いいさ。お城はここにあるんだからな」<br />
　タケルくんは一人でそうつぶやきます。</p>
<p>　ところが、ないはずの返事がありました。<br />
「いいや、よくないぞ」<br />
「だれだ」<br />
　驚いて声のした方を見ます。<br />
　ところが、そこにはタケルくんの作った砂のお城があるだけです。<br />
「気のせいかな」<br />
「気のせいじゃないぞ」<br />
　また返事がして、お城の入り口から、だれかが出てきました。<br />
　タケルくんのつくったお城は、タケルくんの背の半分もありません。<br />
　だから、そこから出てきたそいつも、とても小さなやつでした。<br />
　お父さんのゲンコツくらいの大きさです。<br />
　そいつは全身まっくろで、背中にまっかなマントを着けていました。<br />
「なんだ、おまえ」<br />
　タケルくんの質問に、そいつは胸をはってこたえます。<br />
「おれは砂場の魔王だ」<br />
　砂場の魔王は、ぴょんとジャンプすると、お城のてっぺんに立ちました。<br />
「この城はおれのものだ」<br />
「それはぼくがつくったものだぞ」<br />
　タケルくんがムッとして云うと、魔王は笑いました。<br />
「住んでいるのは俺様だ。ありがたく思え」<br />
　なんて自分勝手なやつでしょう。タケルくんが苦労してつくったお城を勝手に自分のものにするなんて。タケルくんは怒ってそいつを捕まえようとしました。<br />
　魔王はタケルくんの手をひょいとよけると、ピョンピョンとタケルくんの腕を跳びのぼり、肩にのって、タケルくんのほっぺたを蹴飛ばしました。<br />
「バカめ、魔王様にかなうものか」<br />
「いてっ！　よくもやったな」<br />
　タケルくんがカンカンに怒って捕まえようとすると、魔王はピョンピョンと飛び跳ねながらブランコのところまで逃げました。とてもすごいすばやさで、タケルくんでは捕まえられそうにありません。<br />
「なんでいきなり蹴飛ばすんだよ」<br />
　タケルくんが云うと、魔王はつんつるてんの真っ黒な顔をうなづかせました。<br />
「それはな、俺様は気が弱いからだ」<br />
　胸を張ってえらそうに云います。<br />
「気が弱いから、城をとりあげられたらイヤなんでな。おまえを蹴飛ばした。だが安心しろ。本気では蹴らなかったぞ。本気で蹴ってたら大変なことになるところだ」<br />
　そこで魔王は声をひそめました。<br />
「本気で蹴ったら、相手はいなくなってしまうからな。お前も気をつけるといい」<br />
「じゃあ、お前を本気で蹴ってやる」<br />
　その日、タケルくんは日が落ちるまで、魔王を追っかけて走り回りましたが、一度も捕まえることはできませんでした。<br />
「いつでも挑戦に来い。俺様はここにいる」<br />
　お城のてっぺんに立って、魔王はやっぱりえらそうに胸を張って云いました。</p>
<p>　次の日も、タケルくんは公園を走り回りました。<br />
　すべり台をかけのぼり、ブランコをぶんぶんと揺らし、シーソーを何度もぎったんばったんさせながら、公園を走り回りました。<br />
　けれども、魔王はとてもすばやくて、さっぱり捕まえられません。<br />
「俺様は王様だからな、だれにも捕まえられないぞ」<br />
　タケルくんが疲れて休んでいると、魔王は砂場のお城に戻ります。<br />
「なんだよ、王様なんていったって、仲間が一人もいないじゃないか」<br />
「おれには対等な存在なんていない。だから、仲間も友達もいない。おれは、砂場の魔王だからな。王様とは、そういうものなんだ」<br />
「友達がいないだけじゃないか。そんなの、威張ることかよ」<br />
「せめて威張ってないと、悲しいじゃないか」<br />
　タケルくんは、魔王がどんな表情をしているのか、気になって見てみましたが、どれだけ見ても、魔王の顔はつんつるてんの真っ黒です。<br />
「でも、お前は部下にしてやってもいいぞ」<br />
　魔王は云います。<br />
「お前は城を作ってくれたからな。城のおかげで、俺様はここにいられる」<br />
「どういう意味だよ。城がないとなんだってんだ？」<br />
「城がない王様なんて、変だろう？　そんな王様、もう王様じゃないさ。だから、魔王であるおれ様は、城がないといられないのさ」<br />
　魔王がニヤリと笑ったような気がしたけれど、口なんてないから、わかりませんでした。</p>
<p>　次の日も、その次の日も、タケルくんは公園を走り回りました。<br />
　もう、なんで魔王を追っかけているのかも、わからなくなっていました。捕まえてどうしようというのかも、まるで考えていません。ただ走り回ります。<br />
　それでも、結局、最後まで魔王は捕まりませんでした。<br />
　最後は、すぐで突然でした。<br />
　その日も、タケルくんは魔王を追っかけて走り回っていました。まだお昼だというのに、お日様は隠れています。<br />
「そろそろかな」<br />
　すべり台のてっぺんで、魔王は云いました。<br />
「なにがだよ」<br />
「お別れさ」<br />
　魔王の言葉と同時に、タケルくんのほっぺたに、冷たい感触がやってきました。<br />
　雨が、降ってきたのです。<br />
　最初、タケルくんは魔王が何を云っているのかよくわかりませんでした。<br />
　気がついたのは、雨が強くなってからです。<br />
「あっ」<br />
　と叫んだときには、もう手遅れでした。<br />
　砂場につくったお城が、雨で崩れはじめていました。<br />
「城がないとおれはいられない。そういうわけさ」　<br />
　魔王の真っ赤なマントは真っ黒になって、真っ黒な顔は雨の中に薄れはじめました。<br />
「なんでだよ」<br />
　タケルくんは怒って言いました。<br />
「なんでいなくなるんだよ、バカ野郎」<br />
「お別れが怖いのか」<br />
「怖くなんかないぞ」<br />
「俺は怖いぞ」<br />
　魔王は、最後も笑いました。<br />
「怖いから、別れる前にこっちから蹴飛ばすのさ。こんな風に」<br />
　魔王はタケルくんのすねを蹴飛ばしました。<br />
　タケルくんも、魔王を蹴り返しました。<br />
　思いっきり、本気で蹴りました。魔王はいつも通りによけます。<br />
　そして、タケルくんの蹴りは砂のお城にあたって、お城は消えてなくなりました。<br />
　魔王も、いなくなりました。<br />
「本気で蹴ったら、相手はいなくなってしまうからな」<br />
　魔王がそう云っていたのを、思い出します。<br />
　思い出しても、もう、真っ黒なあいつは、どこにもいません。</p>
<p>　雨は、次の日も降っていました。<br />
　タケルくんは、今日も砂場に行きます。ほかに、タケルくんが遊ぶ場所はありません。ここだけが、タケルくんの場所でした。<br />
　真っ赤なカサをささえて、タケルくんは立ち尽くします。なにもできないで、立ち続けます。<br />
　それから、どれくらい経ったのでしょう。<br />
「お城、なくなっちゃったね」<br />
　だれかが隣に立っていました。<br />
「立派なお城だったのにね」<br />
　近所の子です。前にこの公園で遊んでいました。その時、タケルくんは蹴飛ばしました。<br />
「すごいなっていつも思ってたんだ。でも、なくなっちゃったらしょうがないね」<br />
　その子はにっこりと笑うと、言いました。<br />
「晴れたら、また作ってよ。ぼくも一緒に作るよ」<br />
　タケルくんは、いつも通りに蹴飛ばそうとしました。おもいきり、蹴飛ばそうとしました。<br />
「本気で蹴ったら、相手はいなくなってしまうからな」<br />
　けれども、魔王の言葉を思い出して、やめました。本当は、だれにもいなくなって欲しくなんかないのです。<br />
「行こうよ。ぼくの家で遊ぼう」<br />
　蹴飛ばす代わりに、差し出された手を、握りました。</p>
<p>「なんだ、やっぱりそうだ」<br />
「なんだよ」<br />
「みんな、タケルくんが怖いって云ってたんだ。砂場の魔王と呼んでたよ。でも、本当は優しいんだよね」<br />
　ニコニコ笑う友達に、タケルくんは答えました。<br />
「砂場の魔王は、もういないんだ」<br />
&nbsp;</p>]]></content:encoded>  
    <dc:subject>うな童話</dc:subject>  
    <dc:date>2010-03-16T23:24:53+09:00</dc:date>  
    <dc:creator>うなぎ</dc:creator>  
    <dc:publisher>NINJA BLOG</dc:publisher>  
    <dc:rights>うなぎ</dc:rights> 
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    <title>うな童話　　カカシになった親子</title>  
    <description>　昔、戦争がありました。 　それはそれはとてもひどい戦争で、たくさんの人が死にました。 　戦争はとっくに終わったけれど、帰ってこないものがたくさんあります。 　おばあさんの息子も、その一人です。 「えらくなって、お母さんを楽にしてあげます」 　そう云って、ずっと昔に戦争に行ったきり、帰...</description>  
    <content:encoded><![CDATA[<p><br />
　昔、戦争がありました。<br />
　それはそれはとてもひどい戦争で、たくさんの人が死にました。<br />
　戦争はとっくに終わったけれど、帰ってこないものがたくさんあります。<br />
　おばあさんの息子も、その一人です。<br />
「えらくなって、お母さんを楽にしてあげます」<br />
　そう云って、ずっと昔に戦争に行ったきり、帰ってこないのです。<br />
　おばあさんは息子が帰ってくるのをずっと待っていました。<br />
　近くには、だれも住んでいません。<br />
「おばあさん、ここはもうダメだよ」<br />
　戦争で、このあたりの土地もダメにされてしまいました。畑には、ほんの少ししか作物は実りません。<br />
「だから、私たちと別のところへ行きましょう」<br />
　近くに住むみんながそう云ってくれましたが、おばあさんは断りました。<br />
「わたしゃ、息子を待たなきゃならんから」<br />
　もう帰ってきませんよ、とは、誰も云えませんでした。こうして、おばあさん一人を残して、みんなは去っていきました。<br />
　それからずっと、おばあさんはたった一人で息子を待ち続けました。<br />
　息子は帰ってきません。<br />
　本当はもう、おばあさんにもわかっていました。息子はたぶん、戦争で死んだのだと。<br />
　ある日、おばあさんは大きなカカシをつくりました。<br />
「これからは、おまえが私の息子だよ」<br />
　カカシは風に揺れて、うなづいているようでありました。</p>
<p>　それからおばあさんは、長いことカカシと一緒にすごしました。<br />
「今日は風が強いね」<br />
　カカシはうなづきます。<br />
「からだを壊しちゃいけないよ」<br />
（はい、お母さんも、からだをお大事に） <br />
　今ではもう、お母さんにはカカシの、いえ、息子の云っていることがわかります。<br />
「うんうん、おまえは優しい子だね」<br />
　畑に実るわずかな作物を食べて、おばあさんはカカシと一緒に何年も待ちました。<br />
　でも、一体なにを待っていたというのでしょう？<br />
「おかしいね、息子を待っている気がするよ。おまえはここにいるというのに」<br />
（はい、お母さん、ぼくはどこにも行きません）<br />
　息子の答えに満足して、おばあさんは笑いました。<br />
　そうしてある寒さの厳しい年の冬、息子の隣で眠るように亡くなりました。<br />
「お前のおかげで、わたしゃ幸せだったよ」<br />
（はい、お母さん。ぼくもお母さんのおかげで幸せでした）<br />
　こうして、誰もいないやせた畑に、大きなカカシだけが残りました。</p>
<p>　息子は、本当に戦争で死んだのでしょうか？<br />
　いいえ、息子は生きていました。<br />
　おばあさんの住む山から遠く離れた海のそばで、ひっそりと暮らしていました。<br />
「お前はよく働くね」<br />
　村の人は、よそ者の息子に優しくしてくれました。<br />
　実際、息子はよく働きました。死に物狂いで働きました。<br />
「家族はいないのかい？　両親は？」<br />
　息子は首をふって答えます。<br />
「いいえ、もういないのです」<br />
　息子は、後悔していました。<br />
「私にはもう、お母さんに会わせる顔がない」<br />
　えらくなりたくて、戦争へ行きました。<br />
　泣いて止める母親をふりきって、戦争へ行きました。<br />
　たくさんたくさん戦いました。<br />
　たくさんたくさん、殺しました。<br />
　その意味に気づいたのは、戦争が終わってからでした。<br />
　えらくなんか、なれませんでした。後悔だけが、残りました。<br />
「ああ、私の手は、汚れている」<br />
　一人の夜、息子はつぶやきます。<br />
　本当は、息子も母のいる故郷に帰りたいのです。ですが<br />
「優しい母の教えに背いてしまった。どんな顔で、帰ることができるだろう」<br />
　会いたくて会いたくてたまらない母親に、二度と会うまいと、息子は決めていました。<br />
　息子は働きつづけました。やがて村の人にほめられて、小さな畑をもらいました。<br />
　息子は、その畑のために、小さなカカシをつくりました。<br />
「このカカシは、なんだか、お母さんに似ているな」<br />
　息子はカカシのことを、心の中だけでこっそりと「お母さん」と呼びました。</p>
<p>　それからも息子は働きつづけました。<br />
　それが、奪ってしまった命への、唯一のつぐないだと思っていたのです。<br />
　結婚しないのかという周囲の誘いも断って、息子はひたすらに働きつづけました。<br />
　そうして、何年もが経ちました。<br />
　小さなカカシはぼろぼろになってしまったけれど、ずっと息子を見守ってくれました。<br />
　その役目も、もう終わりが近いようです。<br />
「ああ、どうやらダメらしい」<br />
　息子は病気にかかってしまいました。<br />
　はやりのうつり病です。病気を治す方法はありません。<br />
　息子は世話になった人たちに迷惑をかけないよう、一人で村を出て行くことにしました。<br />
「お母さん、一緒に行くかい」<br />
　小さなカカシだけを背に抱え、息子は旅立ちます。</p>
<p>　行くあてなんて、ありません。<br />
　何日も何日も、ひとけのない場所を歩きつづけました。<br />
　しかし、からだが覚えていたのでしょうか。<br />
　やまいがいよいよひどくなり、意識が朦朧としはじめたころ、息子は見覚えのある場所に立っていました。<br />
「ああ、なんだ。ここは、うちの山の近くじゃないか」<br />
　息子が生まれ育った、母親と過ごした家の近くでした。<br />
「お母さん、おうちへ帰りましょうか」<br />
　ボロボロになった小さなカカシに、息子は話しかけます。近頃では、もうカカシだってことも忘れてしまいがちです。<br />
「ああ、お母さんのからだは軽いですね。心配になります」<br />
（いいんだよ、おうちでゆっくり休もうじゃないか）<br />
「そうですね、早くおうちへ帰りましょう」<br />
　何十年も昔に飛び出た村に、息子はやっと帰っていきました。</p>
<p>　村にはもう、だれにもいません。<br />
　やせた土地は、荒れ野となって、だれからも見捨てられてしまいました。<br />
　ふらふらと歩きつづける息子は、その一画に、不思議な畑を見つけました。<br />
　なぜでしょうか、そこの畑だけ、豊かに作物が実っていたのです。<br />
　そして、作物の真ん中では、大きなカカシが、風に揺れて、たたずんでいました。<br />
　あたりを見回して、息子は気づきました 。<br />
「おや、ここはうちの畑ですよ、お母さん」<br />
（そうだね、やっとうちに帰ってきたね）<br />
「これだけの作物があれば、お母さんも困りませんね。それに見てください。とても立派なカカシです。とても大きく、とても力強く、この畑を守ってくれています。ああ、私もこのカカシのようでありたかった。このカカシのように、ずっとここを守りたかった」<br />
　息子は背負ってきた小さなカカシを、大きなカカシの隣に並べて植えました。<br />
「ここならとても安心ですよ、お母さん」<br />
　そうしてニッコリ笑って、二つのカカシの足元で、息子は眠りにつきました。</p>
<p>　誰もいなくなってしまった山のふもとの小さな畑で、豊かな作物に囲まれて、お母さんのつくった息子のカカシと、息子のつくったお母さんのカカシが、いつまでもいつまでも、仲良く並んで風に揺れていました。</p>
<p>&nbsp;</p>]]></content:encoded>  
    <dc:subject>うな童話</dc:subject>  
    <dc:date>2010-03-16T23:23:59+09:00</dc:date>  
    <dc:creator>うなぎ</dc:creator>  
    <dc:publisher>NINJA BLOG</dc:publisher>  
    <dc:rights>うなぎ</dc:rights> 
  </item>  
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    <link>http://unagi0924.blog.shinobi.jp/Entry/66/</link>  
    <title>うな童話　　こんじょうのある犬</title>  
    <description>　ある公園に、一匹の猫がいました。 　猫は、箱の中に住んでいました。すて猫なのです。 　その向かいに一匹の犬がいました。 　犬も、箱の中に住んでいました。やはりすて犬なのです。 　二つの箱はブランコをはさんでありました。 　二匹はいつも向かい合って、いつもケンカをしていました。 　たとえ...</description>  
    <content:encoded><![CDATA[<p>　ある公園に、一匹の猫がいました。<br />
　猫は、箱の中に住んでいました。すて猫なのです。<br />
　その向かいに一匹の犬がいました。<br />
　犬も、箱の中に住んでいました。やはりすて犬なのです。<br />
　二つの箱はブランコをはさんでありました。<br />
　二匹はいつも向かい合って、いつもケンカをしていました。<br />
　たとえばこんな風です。<br />
「ああ、さむいなあ」<br />
　猫がそういうと、犬がこう答えます。<br />
「おまえはこんじょうがないからさむいんだ。おれはこんじょうがあるから、こんなのへっちゃらだ」<br />
「きみの箱には毛布があるじゃないか。だからだよ」<br />
「おれはこんじょうがあるから、こんなものはいらないんだ」<br />
　犬はそういって、猫のあたまに毛布をかぶせます。<br />
　またあるときはこんな風です。<br />
「お腹がすいたなあ」<br />
　猫がいうと犬はこたえます。<br />
「おまえはこんじょうがないからおなかがすくんだ」<br />
　犬はふらりとでていくと、しばらくして、お魚をくわえてもどってきました。<br />
「こんじょうのないおまえは、こいつでも食えばいい」<br />
「きみの分は？」<br />
「おれはこんじょうがあるから平気なんだ」</p>
<p>　二匹には、なかなか飼い主が見つかりませんでした。　<br />
　人間が来るとかくれるからです。<br />
「にんげんにつかまると、ひどいところにつれていかれるぞ。おまえはこんじょうがないから、きっとなきわめくぞ」<br />
　犬がそういうので、猫もいっしょにかくれるのでした。<br />
　そんなある日、公園のまわりにたくさんの人間がきました。<br />
　近所の子供たちが、あつまってなにかをするようです。<br />
「気をつけろよ。ねむっちゃだめだぞ」<br />
　犬はいいますが、猫はこまります。<br />
「でも、ぼくはとてもねむいんだ」<br />
「じゃあ、おれがみはっててやる。おれはねむらないでもへいきだ。こんじょうがあるからな」<br />
&nbsp; でも、本当は犬もとてもねむかったのでした。</p>
<p>　うとうとして、気がつくと、犬のまえから猫はいなくなっていました。<br />
「ああ、とうとう行ってしまったか。本当は、だれかにひろわれた方があいつはしあわせなんだ。だからこれでいいんだ。おれはこんじょうがあるから、さみしくたって、なかないぞ」<br />
　けれども、ひとりぼっちになってしまった公園にいるのは、こんじょうがあってもつらいことです。<br />
　犬は箱からでると、公園の外にあるきだしました。</p>
<p>　猫は、やさしい飼い主にひろわれていました。<br />
　部屋のなかはとてもあたたかく、ごはんもおいしかったので猫はしあわせでした。<br />
　けれども、ときどき気になります。<br />
「あの犬は、どうしているだろう」<br />
　こんじょうがあるからきっとへいきなんだろう、そう思っても、心配なものは心配です。だって、ともだちなんですから。<br />
　そんなある夜、飼い主の女の子がいいました。<br />
「あっ、雪」<br />
　見ると、外では、たしかに雪がふりだしていました。<br />
「たいへんだ」<br />
　おどろいた猫は、窓のそとへとびだしました。<br />
　雪のふる夜は、とてもさむいものです。こんじょうのない猫にはつらいものでしたが、それでも猫ははしりました。ともだちがたいへんだから、がんばって公園にはしりました。</p>
<p>　公園では、ふたつの箱に雪がつもっていて、犬はいませんでした。<br />
「犬くん、犬くん、どこにいるんだい」<br />
　呼んでみても、だれもこたえてくれません。犬はどこに行ってしまったのでしょう？<br />
　犬はあれからいろんな場所をあるいてまわったのです。<br />
　猫のいる家の前にも、いったことがあります。へいのすきまからのぞくと、猫はストーブのまえでとてもあたたかそうでした。<br />
「ああ、よかった。やさしい飼い主がみつかったらしい。あいつはこんじょうがないから、飼い主がいたほうがいいんだ。おれはこんじょうがあるから、ひとりでもへいきだぞ」<br />
　犬はそうつぶやいて、猫のいるいえからはなれました。</p>
<p>　犬はいま、はしのしたにいました。ここなら雪がつもらないからです。<br />
　それでも、雪のふる夜はとても寒くて、犬は目をとじて、ふるえていました。<br />
「おれはこんじょうがあるからへいきなんだ」<br />
　つぶやく声も、ふるえています。<br />
「犬くん」<br />
　なぜでしょう。猫の声がきこえてきます。<br />
「おれはさみしくなんかないぞ。あいつなんて、いなくてへいきなんだだからあいつの声なんて、いらないんだ」<br />
「犬くん、こんなところにいたんだね」<br />
「しつこいぞ」<br />
　犬が目をあけると、猫がのぞきこんでいました。<br />
「ばか、おまえ、なんでこんなところに来たんだ」<br />
「とても寒いから、犬くんがしんぱいで、さがしてたんだよ」<br />
「おれはこんじょうがあるから、このくらいの寒さ、へいきなんだよ」<br />
　けれども、ほんとうはへいきじゃありませんでした。ごはんもちゃんと食べていない犬は、さむさのせいで、ほとんど動けなくなっていたのでした。<br />
　それでも、犬はいいます。<br />
「こんじょうのないおまえは、さっさと家にかえるんだ」<br />
「ううん、ぼくは犬くんといっしょにいるよ」<br />
「だめだ」<br />
「なんでだい」<br />
　犬は、すこし考えていいました。<br />
「おれはこれから、遠くにいくんだ」<br />
「じゃあ、ぼくもいくよ」<br />
「だめだ。そこは、こんじょうのあるやつしかいけない場所なんだ。おまえみたいにこんじょうのないやつは、つれていけないんだ」<br />
「そうか。それじゃあ、しょうがないね」<br />
　猫は犬のとなりにすわりました。<br />
「じゃあ、犬くんがいくまで、ここにいるね」</p>
<p>「ふしぎだね」<br />
　猫はいいました。<br />
「ぼくたち、ずっとおなじところにいたのに、こうしていっしょにねるのは、はじめてだ」<br />
「ああ、そうだな。こんじょうのないやつといっしょにねるなんてはじめてだ」<br />
　犬はいいました。<br />
「こんじょうのないやつといっしょにねると、こんじょうのないのがうつるんだ。そうすると、遠くにいくのが、つらくなるんだよ」<br />
「じゃあ、遠くにいかなければいいよ」<br />
「そういうわけにも、いかないんだよ」<br />
　犬はもう、目がうまくあけられなくなっていました。<br />
「じゃあ、ぼく、よけいなことをしたのかな」<br />
　猫がいうと、犬はしっぽをひとつだけふって、答えました。<br />
「いいや、ありがとう」</p>
<p>　その夜は、とてもさむかったけれど、犬の毛皮につつまれて、猫はあたたかでした。<br />
　あけがた、目をつぶったまま、犬はいいました。<br />
「おれはそろそろいくよ。ここにのこっているように見えるかもしれないけれど、へんじをしなくなったら、もうどこかにいっているんだと思ってくれ」<br />
　それからしばらくして、犬はくるしそうにほえました。<br />
「大丈夫かい？」<br />
　猫がきくと、犬ははっきりといいました。<br />
「おれは、こんじょうがあるからな」<br />
　それが、さいごのへんじでした。</p>
<p>　それから猫は、犬にあったことはありません。<br />
　橋のしたにいっても犬はいなくて、だれにきいても犬の場所はわかりません。<br />
　ほんとうに、遠くにいったのでしょう。こんじょうのあるやつしかいけない場所に。<br />
「ぼくのともだちは、とてもこんじょうがあるんだよ」<br />
　ときどき、猫は飼い主の女の子にそういいます。<br />
　けれども、女の子には猫がなにを言っているのかわかりません。<br />
　それでも、猫はなんどもなんども、おなじはなしをくりかえします。<br />
「ぼくのともだちは、とてもとてもこんじょうがあるんだ」<br />
　あなたの家の猫が鳴き続けていたら、そっと話を聞いてあげてください。<br />
　きっと、大事な友達の話をしてくれているのです。<br />
<br />
<br />
<br />
　<br />
&nbsp;</p>]]></content:encoded>  
    <dc:subject>うな童話</dc:subject>  
    <dc:date>2010-03-16T23:22:08+09:00</dc:date>  
    <dc:creator>うなぎ</dc:creator>  
    <dc:publisher>NINJA BLOG</dc:publisher>  
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    <title>片手がふさがっているからしょうがない(仮)　　はじめに</title>  
    <description>最近ずっと小説を書いてないので、なんか書こうかと思ったが、特にネタがない。 ネタがないというか、設定は思いついても広がらないから書けない。 適当に書きはじめたが、どうする予定もない。 仕方ないのでネット連載という形をとって、コマ切れに適当に載せていくことにした。...</description>  
    <content:encoded><![CDATA[最近ずっと小説を書いてないので、なんか書こうかと思ったが、特にネタがない。<br />
ネタがないというか、設定は思いついても広がらないから書けない。<br />
適当に書きはじめたが、どうする予定もない。<br />
仕方ないのでネット連載という形をとって、コマ切れに適当に載せていくことにした。<br />]]></content:encoded>  
    <dc:subject>片手がふさがっているからしょうがない(仮)</dc:subject>  
    <dc:date>2009-03-29T14:33:11+09:00</dc:date>  
    <dc:creator>うなぎ</dc:creator>  
    <dc:publisher>NINJA BLOG</dc:publisher>  
    <dc:rights>うなぎ</dc:rights> 
  </item>  
  <item rdf:about="http://unagi0924.blog.shinobi.jp/Entry/65/"> 
    <link>http://unagi0924.blog.shinobi.jp/Entry/65/</link>  
    <title>1</title>  
    <description>　片手がふさがっているからしょうがないので、学校を辞めることにした。 　とりあえず、親父にその旨を話してみた。殴られるかな、と思ったが、親父はしつこいくらいに「本当にやめるんだな」「後悔しないんだな」と繰りかえすばかりで、特に激昂した様子はなかった。 「本当にやめる」「後悔はするかも知れないけど...</description>  
    <content:encoded><![CDATA[　片手がふさがっているからしょうがないので、学校を辞めることにした。<br />
　とりあえず、親父にその旨を話してみた。殴られるかな、と思ったが、親父はしつこいくらいに「本当にやめるんだな」「後悔しないんだな」と繰りかえすばかりで、特に激昂した様子はなかった。<br />
「本当にやめる」「後悔はするかも知れないけど、後のことなので今はわからない」と素直にこたえたところ、親父は手にとったタバコを吸うでもなく、バラバラに分解しはじめた。<br />
　考え事をしているときに指が寂しくなる落ち着きのなさは、どうやら遺伝らしい。返答をまたされているおれはおれで、意味もなくボールペンをくるくる回していたのだが、手がすべってペンがキッチンの床に落ちたとき、親父は立ち上がって隣の寝室に行った。<br />
　しばらくごそごそしていたかと思うと、戻ってきた親父の手には分厚い封筒がいくつか握られていた。封のされていないそれを逆さにすると、中から札束が五つ、ゴロンと出てきた。<br />
「五百万ある。一応、お前の教育費の予定だった」<br />
　親父は無造作に札束をつかむと、おれの前に「ドン！」と置いた。<br />
　金額的な重みのため、イメージ的には「ドン！」だが、実際の札束はたいして分厚くもないので「べトン」という音だったが、とりあえずおれには「ドドン！」というくらいの存在感があった。<br />
「これはお前にやる」<br />
　急な展開に喜んでいいものかどうか迷っていると、続けてこうも云った。<br />
「だから、三日以内にうちから出て行け」<br />
「それは、勘当ってこと？」<br />
「別にそんなたいそうなもんじゃない。ただ、今後一切、金銭的物質的援助はしない。例えお前が野垂れ死んでもだ。飯もタダでは食わせん。食っていくんなら金を取るし、泊まって行くんならやっぱり金をとる。あとは、いままで通りの普通の親子だ」<br />
「なるほど、普通の親子ですか」<br />
「いやなら学校を辞めるな」<br />
　そんなわけで三日後、おれは無事、高校に退学届けを提出し、とりあえず近場で借りたアパートになけなしの荷物を放りこんで、住みなれた実家を出ることになった。<br />
「じゃあ、そういうわけで、長年お世話になりました」<br />
　いちおう、頭を下げて挨拶すると、親父は「ああ」と頷いた。<br />
「たまには飯を食いに来い」<br />
「金とるんでしょ」<br />
「メニューに関係なく、一律500円でいいぞ」<br />
「じゃあ献立表ちょうだいよ。ワリのいい日だけ、食べに来るから」<br />
「母さんにそんな計画性があると思うのか？」<br />
　お袋がそこで「うふふふふふふ」と笑った。わが親ながら、相変わらず頭がゆるい。愛すべきポイントだとは思う。<br />
「じゃあ、なんとなく察するよ」<br />
「ああ、是非ともそうしろ」<br />
　親父はむだに力強くうなづいた。それから「だがな」と続けた。<br />
「いまさら云うのもなんだが、片手がふさがっているのなんて、たいしたハンデには思えんのだがな。学校を辞めるほどのものか？」<br />
　本当にいまさらの問いに、おれはちょっとこたえに詰まった。そもそも、そういうことは学校を辞める前に云って欲しい。<br />
「うーん、片手がふさがっていることが問題ってよりは、はたからは片手がふさがってるように見えないのが問題って感じかな」<br />
「実際問題、見えないんだからしょうがないだろう。ていうか、本当にふさがっているのか？」<br />
　この親父も、ちょっと変だと思う。そういうことは、最初に疑問に思うべきなのではなかろうか？<br />
「ふさがっているんだよね、少なくとも自分的には」<br />
「見えんがなあ」<br />
「だから、それが問題なんだって」<br />
「でも、学校を辞めるほどのことか？」<br />
「あらためてそう云われると自信がなくなるけど、三日前のおれは、学校を辞めるほどのことだと思ったんだよ」<br />
「だが、おまえはもう高校二年生だったんだぞ。せめて高校くらい出たらどうなんだ？　いままで十年以上も我慢してきて、残りの一年半が我慢できないってのもおかしな話だろう」<br />
「その辺はまあ、いろいろ事情があったりなかったりだよ」<br />
　特にはないけどね。つうか、なんで退学届を出してから云い出すんだ、この親父は。<br />
「正直なところ、おれはお前のその片手がふさがっている云々は、思春期特有のアレかと思っていた」<br />
「アレだと思うよね、やっぱり。おれもそう思ってた」<br />
「実は今でもアレだと思っている」<br />
「おれもそうなんじゃなかろうかって疑ってる」<br />
「でも違うのか？」<br />
「いまんところ、違うっぽい」<br />
「じゃあ、なんだ、今もあるのか、その剣とやらは」<br />
「うん、ちゃんと握ってるよ、左手に」<br />
　親父の視線がおれの左手にうつる。<br />
「&hellip;&hellip;見えんがなあ」<br />
「だよねえ。でもあるんだよねえ」<br />
「思春期特有のアレだと思うんだがなあ」<br />
「でも、物心ついたときからだからなあ」<br />
　親父は、火の点いていないタバコを持った左手で、頭をかいた。<br />
　おれも、剣を持ったままの左手で、頭をかいた。<br />
　お袋は、なんか「うふふふふふ」と楽しそうに笑っていた。<br />
　なんか切り上げ方がわからなくなったので、一緒に「ははは」と笑って、おれは云った。<br />
「じゃあ、まあ、そういうわけで、行くね」<br />
「おう、またな」<br />
　そんな感じで、おれは荷物の詰まった旅行かばんを右手に、物心ついたときから握りっぱなしの剣を左手に、生まれ育った実家を出た。<br />
　それが、大体三ヶ月ほど前のことになる。]]></content:encoded>  
    <dc:subject>片手がふさがっているからしょうがない(仮)</dc:subject>  
    <dc:date>2009-03-29T13:33:42+09:00</dc:date>  
    <dc:creator>うなぎ</dc:creator>  
    <dc:publisher>NINJA BLOG</dc:publisher>  
    <dc:rights>うなぎ</dc:rights> 
  </item>  
  <item rdf:about="http://unagi0924.blog.shinobi.jp/Entry/63/"> 
    <link>http://unagi0924.blog.shinobi.jp/Entry/63/</link>  
    <title>INDEX</title>  
    <description>おいてある作品のINDEXです。 作品タイトルをクリックするとその記事に飛びます 左のカテゴリからも跳べます。 なんかまちがった連作メルヘン アトラクシア 自意識過剰な少年の無駄に長い放浪 魔剣、ひろったよ 投げやりＳＦコメディ 起動戦士ニンゲン 空...</description>  
    <content:encoded><![CDATA[おいてある作品のINDEXです。<br />
作品タイトルをクリックするとその記事に飛びます<br />
左のカテゴリからも跳べます。<br />
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なんかまちがった連作メルヘン<br />
<a href="http://unagi0924.blog.shinobi.jp/Category/1/"><font size="5">アトラクシア</font></a><br />
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自意識過剰な少年の無駄に長い放浪<br>
<A Href="http://unagi0924.blog.shinobi.jp/Category/2/"><font size="5">魔剣、ひろったよ</font></A><br>
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投げやりＳＦコメディ<br>
<A Href="http://unagi0924.blog.shinobi.jp/Category/3/"><font size="5">起動戦士ニンゲン</font></A><br>
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空回り壁ラブコメ<br>
<A Href="http://unagi0924.blog.shinobi.jp/Category/4/"><font size="5">バカな壁</font></A><br>
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ホラーになりびれたちょっといい話<br>
<A Href="http://unagi0924.blog.shinobi.jp/Category/5/"><font size="5">くねくね</font></A><br>
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なんの意味もなく書かれたベタ脚本<br>
<A Href="http://unagi0924.blog.shinobi.jp/Category/6/"><font size="5">Ｄ×Ａ</font></A><br>
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キモメンの独り言<br>
<A Href="http://unagi0924.blog.shinobi.jp/Category/7/"><font size="5">彼女が還った夜</font></A><br>
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なんかちがうピカレスク<br>
<A Href="http://unagi0924.blog.shinobi.jp/Category/8/"><font size="5">阿久我大介、昇天</font></A><br>
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なにかの手違いとしか思えないやおいファンタジー<br>
<A Href="http://unagi0924.blog.shinobi.jp/Category/9/"><font size="5">聖王大祭</font></A><br>
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気が向いたら増えていきます]]></content:encoded>  
    <dc:subject>このブログの説明</dc:subject>  
    <dc:date>2008-12-26T22:25:29+09:00</dc:date>  
    <dc:creator>うなぎ</dc:creator>  
    <dc:publisher>NINJA BLOG</dc:publisher>  
    <dc:rights>うなぎ</dc:rights> 
  </item>  
  <item rdf:about="http://unagi0924.blog.shinobi.jp/Entry/62/"> 
    <link>http://unagi0924.blog.shinobi.jp/Entry/62/</link>  
    <title>聖王大祭　　はじめに</title>  
    <description>長編ファンタジー。たぶんやおい風味。自分なりに。 そうだ、栗本薫風のやおいファンタジー書けばいいんじゃね？ と思いついたのがかれこれ十年前で、すっかり忘れていたのを書き上げてみたのがもはや六年前になるか。 ちゃらっと百枚くらいで書くつもりが説明が下手なために伸びに伸びて三百枚を越してしまい、時...</description>  
    <content:encoded><![CDATA[長編ファンタジー。たぶんやおい風味。自分なりに。<br />
そうだ、栗本薫風のやおいファンタジー書けばいいんじゃね？<br />
と思いついたのがかれこれ十年前で、すっかり忘れていたのを書き上げてみたのがもはや六年前になるか。<br />
ちゃらっと百枚くらいで書くつもりが説明が下手なために伸びに伸びて三百枚を越してしまい、時間はかかるわ出来はひどいわ人には見せられないわで陰鬱な気持ちに陥った。<br />
とにかく説明が下手、語彙に乏しい、文章が固い、無駄に長い、色気がない、ストーリーがしょっぱい、対象読者不明といいところが見当たらないが、これが俺かと言われれば、たしかに俺なので、困ったものだ。<br />
この作品を契機に、雰囲気を出すということをあきらめはじめた。<br />
雰囲気はがんばって出すものではなく、勝手に出るものであるべきだからだ。<br />
それに気づくのに数年間かかりましたとさ。<br />
<br />
<br />
あらすじ<br />
みんながお祭りで大騒ぎしているときに、主人公は「けっ」とかいって陰々鬱々としてぶつぶつ云いながら散歩していたら、あるはずのないところに変な建物を発見したので、勝手に入ってみたらいろいろと大変なことになって惚れたはれたの大騒ぎになったけど、なんだかんだですべてよくなった。<br />
<br />
<br />
目次<br />
<br />
夜の始まり<br />
第一夜<br />
第二夜<br />
第三夜<br />
第四夜<br />
第五夜<br />
第六夜<br />
断章　偽りの世界<br />
最後の夜<br />
エピローグ　はじまりの大樹<br />
<br />
<br />
txt形式でアップしとこうかと思ったけど、めんどうなのでやめた。あんまりここに人来ないし。<br />
読みにくいからtxtで寄越せよ！という人はメールください。そしたらあげます。<br />
アドレスは<a href="mailto:unagisan01@hotmail.com">unagisan01@hotmail.com</a>で。]]></content:encoded>  
    <dc:subject>聖王大祭</dc:subject>  
    <dc:date>2008-03-04T11:45:29+09:00</dc:date>  
    <dc:creator>うなぎ</dc:creator>  
    <dc:publisher>NINJA BLOG</dc:publisher>  
    <dc:rights>うなぎ</dc:rights> 
  </item>  
  <item rdf:about="http://unagi0924.blog.shinobi.jp/Entry/61/"> 
    <link>http://unagi0924.blog.shinobi.jp/Entry/61/</link>  
    <title>聖王大祭</title>  
    <description>　その人がバルコニーに姿を現したとき、民衆の熱狂はついに頂点へと達した。 「万歳」 「聖王陛下万歳」 「聖王祭万歳」 「神聖イルナー王国万歳」 「イルナーと陛下に栄光あれ」 「万歳」 　悲鳴とも絶叫ともとれる己が民人の声に、その人は薄紫のマントをひるがえすと、優雅に手を挙げて応えた。 ...</description>  
    <content:encoded><![CDATA[　その人がバルコニーに姿を現したとき、民衆の熱狂はついに頂点へと達した。<br />
「万歳」<br />
「聖王陛下万歳」<br />
「聖王祭万歳」<br />
「神聖イルナー王国万歳」<br />
「イルナーと陛下に栄光あれ」<br />
「万歳」<br />
　悲鳴とも絶叫ともとれる己が民人の声に、その人は薄紫のマントをひるがえすと、優雅に手を挙げて応えた。<br />
　瞬間その人の、のぼる太陽そのものであるかのごとき金の髪が風に揺れて広がり、そこに立つ彼を神話に伝わる大神ローネスの化身であるかのようにすら思わせた。<br />
　人々はみな一瞬息を呑んだ。<br />
　が、すぐにさきほどにも倍する歓声で己達の唯一の主君を迎えた。<br />
「栄光あれ」<br />
「神聖なる王国に、陛下に」<br />
「永遠なれ。陛下の御治世よ永遠なれ」<br />
「万歳」<br />
「聖王陛下万歳」<br />
「聖王万歳」<br />
「神聖イルナー万歳」<br />
　その人が髪と同じ輝く金色の瞳で人々を見渡すと更に歓声は増え、その人がうっすらと微笑みを浮かべると熱狂はどこまでも高まりとどまることが無かった。<br />
　聖都エイルナードの、そして神聖イルナー王国のすべての者がその人に賞賛を与えることを惜しまず、限りない敬意と憧れを持ってその人を見た。<br />
　争乱の時代だった。暗黒の魔道帝国と、それを打ち破った勇者によって成された大イルナー共和同盟の時代は遙か幾百年の昔のこととなった。<br />
　同盟はとうの昔にその効力を失い、決して広くも肥沃でもない土地をめぐり、平原を囲む国々はいつしか争いを始めた。<br />
　幾多の国が滅び、また興りが繰り返される。<br />
　平原最古の歴史と伝統を誇る神聖イルナー王国もまた、戦火を免れることは出来なかった。<br />
　小さな内乱から始まった戦乱の火の手は、またたく間に国中を燃え上がらせ、侵略と謀略の果てついに時の君主、聖王イル・ジャオスまでをもその炎で包み、命を奪い去る。<br />
　絶望のただなかで、神聖イルナー王国の人々は大神ローネスに祈りを捧げた。それよりほかに、できることがなかった。<br />
　神よ救い給え。<br />
　聖なる都を守り給え。<br />
　英雄神リクリスをここへ。<br />
　神の御威光に守られた真なる聖王を遣わせ給え。<br />
　人々の願うはただそればかり。<br />
　願いは成就された。<br />
　先の聖王イル・ジャオスの第三子にして第一王位継承者、金の髪と金の瞳に彩られた美貌を持つ、神聖イルナー王国第十七代聖王。<br />
　名を、イル・サイナス・ラフォン・トリータ一世。<br />
　それが、その人だった。<br />
　即位よりいくらも経たず、人々は口々にその人を崇め讃えた。<br />
　あの御方には神の御加護がついている、と。<br />
　即位より一月。<br />
　大軍を揃え侵略の構えを見せていた大国セイランは内乱により二つに分かれる。<br />
　即位より三月。<br />
　常に虎視眈々とイルナーを窺い、国境に軍を展開していた隣国リンクラウドはフォトキアの侵略により軍を撤退。更にイルナー側に非常に有利な条件での一時休戦を申し込んでくる。<br />
　即位より半年。<br />
　密かに海岸からのイルナー侵略を企んだシェムス連合の大船団は、季節外れの嵐に遭遇し壊滅。戦わずして撤退した。<br />
　すべてが、この調子だった。<br />
　イル・サイナスの即位より、イルナーはただの一度も戦乱に巻き込まれることはなく、相次ぐ戦乱の中イルナーのみが平穏な時を過ごし、ついには十年が過ぎた。<br />
　十年もの月日を戦乱と無縁でいること、それはこの時代には奇跡だった。<br />
　だからこそ、誰もが彼を讃える。<br />
　聖なる王、イル・サイナス・ラフォン・トリータ一世の聖王祭を国中のものが心から祝うのだ。<br />
　しかし<br />
（ふん。何が聖王祭だ）<br />
　非常に数少なくではあったが、イルナー国内、それも聖都エイルナードにも、聖王祭を祝わないものが存在した。<br />
（何が聖王祭だ。何が聖王だ。何が&hellip;&hellip;）<br />
　聖王祭とは、聖王が即位した日を祝う祭りである。<br />
　聖王祭の日は、一年間国を守ってくれた聖王に感謝の意を捧げ、また次なる一年の聖王の加護を求める日であり、国中をあげての祭りとなる。<br />
　特に五年ごとの祭りは大祭と呼ばれ、七日をかけて祝う盛大さだ。今日はイル・サイナスの即位より十年。イル・サイナスにとっての二度目の大祭、その一日目となる。<br />
　聖王祭の日は、普段は貴族とその許しを得た者以外の出入りは厳禁とされる聖王区が特別に一部解放される。<br />
　人々は我先にとその場所、〈リクリスの掌〉と呼ばれる大広場に集まる。<br />
　中には祭りの数日前より仕事を放り出し、聖王区の入り口の門の前で幾晩も夜を徹し、祭りの日が来ると同時に広場の中へと他者を押しのけ駆けつける者も少なくない。<br />
　なぜなら、庶民にとって天上の神にも等しい聖王の姿を見る、ほとんど唯一の機会であるからだ。<br />
　聖王祭の日、太陽がちょうど聖王城の真上にかかったとき、聖王は民衆の前に姿を現すしきたりとなっている。<br />
　と云っても、城の最も広場に面したバルコニーに立つだけであり、広場にいても後ろのほうは王の姿は見えず、見えても誰かを判別することはまず不可能である。<br />
　だがそれでも、民衆は彼らの聖王を一目見んとして、夜を徹し少しでも王に近づける場所を求める。<br />
　そういった儀式も終わり、今は夜、聖王大祭の第一夜がようやく終わろうとしている。<br />
　空には聖王を祝福するように満天の星が輝く刻限となったが、人々の熱狂は少しも冷めやる気配はない。<br />
　まだ大祭は一日目、祭りはこれからだ。大祭ともなると、七日間ほとんど眠らず騒ぎ続ける者もいるほどなのだ。夜も昼も、関係ない。<br />
　それが疎ましいと、彼は思った。<br />
（何が聖王祭だ。何が聖王だ）<br />
　彼とてこの国に生まれ、この国に育った者だ。聖王への忠心というものはある。<br />
　むしろ一月ほど前には人一倍忠誠あついほうだと云えた。<br />
　神聖イルナー王国を信じ、大神ローネスの加護を信じていた。<br />
　だが<br />
（この国が神の庇護下にあると云うのなら、なぜ彼女は死んだのだ。なぜ咎人がのうのうと逃げおおせているのだ）<br />
　それを思うと、とても聖王祭を祝う気になれぬ。<br />
　街のあちらこちらで大声でがなりたてられる聖王を讃える声も疎ましい。<br />
　そう思えばこそ、誰もが厭う祭りの日の王城警護に志願したのだ。<br />
　しかし、国をあげての祭りの騒乱が、普段は静まり返った城の内にまで轟き響いていたのは彼の誤算だった。<br />
（大丈夫なのかこの国は）<br />
　大神ローネスの加護を信じ切っていた一月前では思いもしなかったことが彼の頭に去来する。<br />
（この浮かれ騒ぎの隙を他国に突かれでもしたら&hellip;&hellip;）<br />
　無論、それは考慮され国境地帯の警備には貧乏くじを引いた兵士たちにより通常に倍する兵力が配されていることは彼も知っている。だがこの騒ぎを見聞きしていると、それすらも無意味に思えてくるのだ。<br />
「なにも異変はないか」<br />
「はっ。ありません」<br />
　声をかけられた若い警備兵が、驚いたように身を震わせて答えた。<br />
　気が緩んでいる。それに、見回す限りに見える警備兵は、どれもひどく年若い者か、逆に年老いた者に見える。<br />
　貧乏くじを引かされるのは常に力のないものと決まっているのだ。<br />
　彼と同年代の者たちは、祭りに加わり楽しくやっているのだろう。国境地帯も似たようなものではないだろうか。だったら、倍する兵力が配されていたとしても無意味だろう。<br />
（まったく、どいつもこいつも）<br />
　だが昨年は彼もその一員であったのだ。それを忘れたわけではない。<br />
　しかし込み上げてくる怒りは隠せぬまま、彼は足早に歩いた。<br />
　どこへと目的地があるわけではない。少しでもこの喧噪の少ない場所へ行きたかった。<br />
　輝く白銀の近衛兵正装に身を包んだ特殊警備隊の彼を咎め立てる者は一人としてなく、彼は聖王城の奥へ奥へ、普段彼とて足を踏み入れぬ場所へと進んでいた。<br />
（ここは&hellip;&hellip;）<br />
　つと、彼は足を止めた。<br />
　気がつくと、喧噪は遙か遠く微かに聞こえるだけとなり、辺りには数少ない警備兵がいるだけであった。<br />
「おい、ここは&hellip;&hellip;」<br />
　彼は手近にいる警備兵に声をかけようとして、やめる。<br />
　不謹慎なことに、警備兵は居眠りをしていた。<br />
　叩き起こし叱りつけようかとも思ったが、まだ少年じみた警備兵の顔を見るとその気も失せた。<br />
　それに、人と話したい気分では到底ない。<br />
　こんな何もない場所へ来るものもありはすまいし、見なかったことにしようと彼は決めた。ここがどこなのかと訊こうと思っていたのだが、すぐにそれも知れたことだ。<br />
　聖王城の中にあって、喧噪から遠く警備の薄い場所と云えば一つしかない。<br />
〈神の庭〉である。<br />
　王城の奥深くの門をくぐると突然開ける緑の庭は、神の庭と呼ばれる場所であり、代々何人も立ち入ることを固く禁じられている場所なのだ。<br />
　その禁令は強く、命を発した聖王自身ですらここに立ち入ることはないと云う。<br />
　王は云う。<br />
〈神の庭〉はすでにイルナーではなく、神の領土であるのだ、と。<br />
　事実、ここに入った者があると彼は聞いたことがない。<br />
　庭は草木や花咲き乱れる場所であるが、それを手入れする者すらおらず、しかし草花が枯れることは決してない。まさしく神の領土であるのだ。<br />
　いつのまにここまで迷いこんで来たのだろうか。彼は近衛兵ではあったが、ここまで来るのは初めてのことだった。<br />
　来る用事もないし、そもそも本来ここまで入り込むことはできない。<br />
　途中で誰何され止められるのが関の山だ。<br />
　今日のような祭りの日に、特殊警備隊の任に着いていればこそ来れたのだ。<br />
（しかし、噂通り何もないな、この辺りは）<br />
　夜であるから門は閉じられ辺りには眠っている少年兵一人だけで、長い通路にはかがり火のほか何もない。<br />
　静寂を求めてやってきた彼の要望にこれほど答えてくれる場所があるとは彼自身思わなかった。<br />
（この門の向こうが、噂の神の庭か）<br />
　一月前の彼ならば、そうは思わなかったかもしれない。<br />
　あるいは思っても行動に移すことはなかったかもしれない。<br />
　彼は人一倍真面目な、それこそ同僚にからかわれるほど朴訥で信仰篤い青年であったから、たとえわずかでも神に逆らうようなことはしようともしなかったはずである。<br />
　しかし今の彼は聖王祭を祝う気にもなれぬ絶望の中にあった。<br />
　大神ローネスも、聖王イル・サイナスも、いまの彼にはほとんどどうでもよく感じられた。<br />
　あるのはただ好奇心だけだ。<br />
　噂に名高い永遠に枯れることのないという神の庭を一目見てみようと云うだけの。<br />
　彼は眠る警備兵を起こさぬよう気をつけながら両開きの門をゆっくりと開けた。<br />
　夜の中、明かり一つ灯らぬ神の庭は暗闇。<br />
　その中に浮かび上がるのは荒れ果てた土地だった。<br />
（なんだ、どうなっているんだ）<br />
　自分の目を疑った。そこにあるのは草木豊かに実り、一年を通し花咲き乱れると伝えられる神の庭ではなかった。<br />
　荒れ果てた、長いこと人の手の入った様子のない土地だった。<br />
（間違ったか）<br />
　しかし聖王城の中に禁じられた静寂の地が二つとあるわけがない。<br />
　それ以前に、このような荒廃した場所が伝統と文化を誇る神聖イルナー王国の聖都エイルナードの、それも聖王の住まう城に存在するはずがない。<br />
（どうなっているんだ）<br />
　彼は思わずそこに足を踏み入れた。<br />
　ごつごつとした石の感触と、整備されていない地面の感触があり、目に見えているものが幻影でないことを告げていた。<br />
　城下ではこうこうと焚かれている明りも、ここには微塵もない。<br />
　さきほどまで彼の上で輝いていたはずの星々は月に隠れでもしたのか、ふと見上げた空は真黒く、周囲は真の暗闇であった。<br />
　振り向くといつのまにか門は閉じられていた。<br />
　気がつくと、彼は自分がどこにいるのかを忘れるほどの暗闇の中にいた。<br />
（さきほどまで微かに聞こえていた喧噪もまるきり聞こえない。何もかもが見えず聞こえず、こうしてここにいると、全てが虚無へ消え去ったようだ。いや、それとも最初から何もなかったものを、何かの手違いで有ると感じていただけかも知れない。イルナーも聖王も聖王祭も、この俺も世界そのものすら、最初から何もなかったのではないか）<br />
　彼女も、そして一月前のあの惨劇も。<br />
（違う）<br />
　彼は暗闇の中で短く鋭く首を振った。<br />
（これは逃避だ）<br />
　自分は理由をつけて逃げようとしている。彼女のことをなかったことにし、あの苦しみの記憶を消去しようとしている。<br />
　だが、事実は彼女は存在し、死んだのだ。<br />
　一月前、彼の目の前で。<br />
　その事実を認識するのが辛くて逃避しようとしているのだ。<br />
　それでも逃避するわけにはいかない。彼女の仇をとるまでは。<br />
（そうだ、奴らにしかるべき復讐を為すまでは）<br />
　その奴らとは何者なのかをすら、彼は知らない。<br />
　彼は何も瞳に映さぬ暗闇の彼方へ、かぐろい炎を孕んだ眼差しを注いだ。暗闇の彼方に憎むべき奴らがいるかのように。<br />
　彼の瞳が暗闇の向こうに捉えたのは、ひどく年経た石造りの壁であった。<br />
（なんだ、あれは）<br />
　つい先程までここに有ったのは、荒れ果てた土地と暗闇だけのはずだった。それが突如、としか云いようが無い。<br />
　塔があった。<br />
　すぐにそれが塔だと知れたわけではない。最初闇に浮かび上がるように古い苔むした石の壁が彼の前にあり、驚いた彼は自身にもわからぬままとっさに空を見上げた。<br />
　空にはいつのまにか雲が動いたのか、再び星が輝き、その天に吸い込まれるように石の壁が湾曲を描き伸びていた。<br />
　一度認識すると、薄闇の中でその建造物は異様なまでの存在感を示していた。<br />
　光が有るわけではない、むしろ逆だ。<br />
　その建物の周りだけ、闇が濃かった。<br />
　わずかな星明りをすら拒むように、まるで闇そのものが物質的な重みを持って凝固した存在であるかのように、その建物は暗く重くそれゆえに薄闇の中でひときわ目立っていた。<br />
　それは螺旋塔であった。<br />
（螺旋塔なんて&hellip;&hellip;そんな馬鹿な）<br />
　螺旋塔の存在は基本的に禁忌である。<br />
　遙かな魔道の時代、魔道士達が好み住んだのが、螺旋塔であった。<br />
　外壁がねじれながら天に上がると云うその形状そのものが魔道の装置であり、魔道に不可欠な建造物なのだ。<br />
　だからこそ、魔道文明を完全に廃したうえで築かれた大イルナー共和同盟の末裔である現在の平原の国家には、螺旋塔があるはずはない。<br />
　かつて存在した多数の螺旋等は破壊され、新たな螺旋塔の建造もローネス教の教義によって禁止されている。<br />
　ましてや彼がいるのは大イルナー共和同盟の盟主である神聖イルナー王国の首都、ローネス教の総本山をも近郊に構えた聖なる都エイルナードのそのまた中枢、聖王城であるのだ。<br />
（ありえない）<br />
　平原に現存する螺旋塔は五つ。<br />
　いずれもローネス教の管理下にあり、エイルナードには、ない。<br />
　しかしだとすれば、彼の前にそびえるこれは何だ。<br />
　暗く重く、彼の前に歴然とした存在感を示し存在するこの螺旋塔は何だ。<br />
（ありえない、しかし）<br />
　彼は塔に歩み寄った。<br />
　一歩進むごとに体が闇に浸されていくように感じられた。<br />
　もし見ている者がいたなら、彼が闇に飲み込まれ、この世界から消え去ったと思ったかも知れない。<br />
　だが、ここには彼のほかに一人もなく、物音一つせず、ただ時に強くなり弱くなる星の輝きと怪しげに揺らぐ月の光だけがあった。<br />
　まったくの暗闇の中から、浮かび上がるようにこれもまたやはり古びた鉄の扉が現れた。<br />
　扉の表面には複雑な曲線を描いた文様が無数に刻まれており、そのいずれもが彼には見覚えもないものであった。<br />
（もし、境界の扉があるとするならば、それはこうしたものなのかもしれないな）<br />
　いつも通りに開けたいつもの扉が、ときに幽世へとつながっていることがあるという――イルナーに住む者ならば誰でも知っている怪談だ。<br />
　彼も幼心にそれをひどく恐ろしいと思い、扉を開くたび、あるいはもしやこれこそが境界の扉なのではないだろうかと、密かにそう怯えたことも少なくない。成長するにつれいつのまにか、そんな恐れもなくしていたが。<br />
（だがもし&hellip;&hellip;もしこれこそが境界の扉であり、俺をこの生者の世界から死者の世界へと連れ去ろうとしているのならば&hellip;&hellip;。いま俺の前に現れたのは偶然ではない、そうだろう、フェミナ）<br />
　胸の中でそっとつぶやくだけでも、その名を思うと彼の心はひどく痛んだ。<br />
　その痛みが彼を境界の向こうへと誘っているようだった。<br />
　彼は扉に手を当てると、力を込めた。<br />
　扉はそれほど大きくはなく、大の大人が一人通れる程度であったが、見た目に反してひどく重かった。<br />
　若く、いかにここ最近は自暴自棄に陥っていたとはいえ元々鍛えられていた彼の力を持ってしても一息に開くことは難しく、扉は長いこと開くものがいなかったことを示すように重く錆ついた音をたてながらゆっくりと開いていった。<br />
　闇というものはどこまで深くなれるものか、塔の中では、また一段と重く闇がこごっていた。<br />
　闇はこの世の光という光を拒んでいた。<br />
　それをむしろ心地よいと感じ、彼は闇の中へと身を投じた。<br />
　無論、その扉は現世と幽世を隔てるものでなどありはしない。<br />
　だが、ある意味においてはそれはまさしく境界となる扉であった。<br />
　この扉をくぐったときより、彼は今までとは異なる世界へと住まうことになった。<br />
　いや、その世界はもとより確かに存在し、ただ彼ら一般の者が見ることの叶わなかっただけであるのだから、彼が異なる世界の相を見ることになった、というのが正しいであろう。<br />
　いずれにしろ、彼はここから禁忌の世界へと足を踏み出した。<br />
　その禁忌の名を、魔道と云う。]]></content:encoded>  
    <dc:subject>聖王大祭</dc:subject>  
    <dc:date>2008-03-04T11:26:22+09:00</dc:date>  
    <dc:creator>うなぎ</dc:creator>  
    <dc:publisher>NINJA BLOG</dc:publisher>  
    <dc:rights>うなぎ</dc:rights> 
  </item> 
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